12章 井伊家創設の秘密-3
『古事記』は天皇と国家の権力の絶対化をはかる反律令国家の史書である。
『古事記』の日本建国の〔愛〕の理念を後世へ伝えんとして著作された。この日本建国の〔愛〕の理念は『古事記』上巻のテーマとなり、それは伊耶那岐命の黄泉国訪問説話末部の千引の石(ちびきのいわ)の前における伊耶那岐命の「吾一日に千五百の産屋立てむ」という宣誓で表示される。『古事記』は律令体制が抹殺せんとする日本建国の〔愛〕の理念を残さんとする史書であるので、元明天皇は『古事記』献上を拒否して焚書(ふんしょ)とした。だから、正史『続日本紀(しょくにほんぎ)』には『古事記』編纂や完成などに関する記事は一切載せられていない。しかし、『古事記』は日本民族の理想や国民が残して欲しいと強く求めた歴史を記載した書物であったために、律令体制が抹殺をはかって焚書したにもかかわらず消滅せずに後世まで残った。
日本建国理念「吾一日に千五百の産屋立てむ」と宣誓された千引の石は、和歌山県新宮市磐盾(いわたて)町に所在する神倉(かんのくら)神社のご神体「ごとびき岩」である。このごとびき岩は、『古事記』の伊耶那岐命の黄泉国訪問説話の千引の石の説明記事に合致する。岩の名「ごとびき」は「蟾(ひきがえる)」を意味する。
『古事記』は712年(和銅5)1月28日に元明天皇に献上されたが、天皇はそれを拒絶した。翌713年、風土記編纂が発令され、諸国郡郷名に好字2字を用いるように命令された。これは、日本建国史やその〔愛〕の理念を伝える地名の抹殺をはかるための政略であった。当時は建比良鳥命の子孫が居住した引佐町井伊保(のちの井伊谷)周辺の地名は「蟾郷」または「渭郷」であった。前者の「蟾郷」は「ごとびき(蟾)の郷」と意味するので、日本建国の〔愛〕の理念を表示する地名であるので、朝廷に刃向う者として氏族が抹殺されるのを畏怖して、建比良鳥命の子孫は「蟾郷」を「渭伊郷」と改めた。この「渭伊郷」の[伊]は「伊耶那美命・伊耶那岐命」の先頭字[伊]であり、なおも密やかに日本建国の〔愛〕の理念を残さんとして律令体制に抵抗するものであったのである。
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