« 古代エジプト文字の字源・19 | トップページ | 古代エジプト文字の字源・21 »

2015年11月27日 (金)

古代エジプト文字の字源・20

 ヒエログリフ「アテフ冠」の字源解明

◆今回は前回「古代エジプト文字の字源・19」の続きである。前回では、ヒエログリフの「オシリス神」の字源を解明した。オシリスは冥界(めいかい)の支配者(死者の国の王)であり、「夜の太陽」となった。オシリス神がかぶる冠の名称は〈アテフ〉である。この「アテフ冠」のヒエログリフの字源の秘密を、今回は解明する。
 すべてのヒエログリフは、私が「文字作成銀河」と名づけた範囲から作られた。この「文字作成銀河」の写真を下に掲載する。この白黒写真は、わが国の天体写真の第一人者とされる藤井旭氏が撮影した。
Ginga
(C) 2015 OHKAWA
 
 ヒエログリフの字源・字形・字義となった文字作成銀河における各部分は明確な形を有する。しかし、世界中を探しても文字作成銀河の各部には名称が存在しない。そこで私は下に示すがごとく、文字作成銀河の各部の名称を定めた。

Photo
(C) 2015 OHKAWA


 ◆A図左図に示すオシリスがかぶる冠は、A図中央のヒエログリフとなる。このヒエログリフはガーディナーのリストの「R8」と分類され――表意文字または決定詞として、この冠の名称〈アテフ〉の中で使われる。
 イアン・ショー&ポール・ニコルソン著/内田杉彦訳『大英博物館 古代エジプト百科事典』(原書房)は「オシリスがかぶるのは独特の〈アテフ〉冠で丈(たけ)の高い〔白冠(しろかんむり)〕の両側面に羽毛飾りがついているが、雄羊の角(つの)をつけて表される場合もある」と記述する。A図右図は「白冠」のヒエログリフである。
E751
(C) 2015 OHKAWA
 

 マリア・カルメラ・ベトロ著/南條郁子訳『[図説]ヒエログリフ事典』(創元社)は〈アテフ〉冠は「ダチョウの羽2枚と雄羊の角を組合せた冠である」と指摘する。したがって、A図中央の〈アテフ〉冠は、中央が白冠、白冠の両側面がダチョウの羽、下部は雄羊の角の組合せということになる。
 B図左図はガーディナーのリストの「H6」となる「ダチョウの羽」のヒエログリフである。この「ダチョウの羽」の字形は〈アテフ〉冠における白冠の両側面の羽毛飾りの形と同じである。「ダチョウの羽」のヒエログリフは表意文字として、「羽」を意味する〈シュート〉の中で使われる。
 B図右図はガーディナーのリストの「E10」となる「雄羊」のヒエログリフである。このヒエログリフは決定詞として「雄羊」を意味する〈バー〉や、その同義語につく。また、羊頭神クヌムの名前も決定する。
E752
(C) 2015 OHKAWA

 B図右図の「雄羊」のヒエログリフは、水平にのびてねじれる角を有する大柄な羊の姿をデザインする。この羊はエジプトに先史時代から生息していた「古代エジプトアシナガヒツジ」であり、中王国時代(紀元前2000年紀前半)に絶滅した。しかし、絶滅以後も「雄羊=古代エジプトアシナガヒツジ」のヒエログリフは存続し、多くの羊頭神の名前を決定し、また各地で崇拝された聖羊をあらわすのにも用いられた。
 B図右図の古代エジプトアシナガヒツジの水平にのびるねじれる角は、A図中央に配置する〈アテフ〉冠の下部に付け加えられた。
 前回のわがブログ「古代エジプト文字の字源・19」において、〈アテフ〉冠中央の「白冠」のヒエログリフの字源は、C図に示す「人の横顔に酷似する銀河の額(ひたい)」にある国際天文学会が「北天の最輝部(さいきぶ)」と名づけた銀河部であると指摘した。
E753
(C) 2015 OHKAWA

 その証拠に「白冠」は「北天の最輝部」の形に相似する。「北天の最輝部」とは「エジプトの人々はじめ北半球に住む人々が最も輝いて見える銀白色の銀河部」のことである。
◆「北天の最輝部」を額(ひたい)に有する「人の横顔に酷似する銀河」には、C図に示すように、はくちょう座の中央部が漬()かる。
 D図の中央に示すように、上掲した文字作成銀河における「北天の最輝部」の形は注意ぶかく凝視すると、「白冠」の形よりもむしろB図左図の「ダチョウの羽」のヒエログリフの字形に相似する。
E761

(C) 2015 OHKAWA

 「北天の最輝部」の下部は、B図右図の「雄羊の角」の形に相似する。「人の横顔に酷似する銀河」の左目(東側の目)の横には、はくちょう座の39番と41番の星がある。この二つの星や星屑を連結すると「ねじれた雄羊の左の角」のように観える。また、「人の横顔に酷似する銀河」の右側にも、はくちょう座η星・17番・8番・4番と「ねじれた雄羊の右の角」の形となって幾つかの星屑が並ぶ。
 国際天文学会の名称「北アメリカ星雲・ペリカン星雲」を〔雄羊の目〕と見立てると、「長方形の暗黒天体部」は〔雄羊の顔〕に相当し、「鬼の姿に似る銀河とその西隣の星屑の並び」は〔雄羊の水平に伸びるねじれる角〕のごとくに観える。
 また〔雄羊の目〕となる「北アメリカ星雲」は「ダチョウの頭・両目・くちばし」の形に相似する。
 そして、国際天文学会の名称「コールサック(石炭を入れる袋のように真っ黒な銀河部)とその南隣の暗黒天体部」は〔人・ダチョウ・雄羊が走る足の形〕のごとくに観える。 
 E図に、〔走るダチョウの姿〕を示した。「コールサック」が下・「南の暗黒天体部」が上になるように反転すると、「コールサックとその南の暗黒天体部」は「ダチョウの走る足」のごとくに観える。
E771
(C) 2015 OHKAWA
 
◆人間の目は、自動露出カメラのように、本人の意志にかかわりなく、周囲の明るさに応じて絞り(虹彩/こうさい)が働いて瞳孔径(どうこうけい/瞳孔の直径)が約2mmから7mmくらいまで縮小・拡大する。これゆえ、視界の中に光がまったく入らない真っ暗な闇となる場所から銀河を見上げると、瞳孔径は最大に拡大する。
 現在、日本の各地の町では夜間になっても地上灯火で明るいので、瞳孔径が縮小されて銀河の各部の形が見えない。
 上掲した文字作成銀河の白黒写真は、おそらく瞳孔径が6mmぐらいの形をあらわすものであろう。下に藤井旭氏が撮影した、文字作成銀河の上半分のカラー写真を掲載した。このカラー写真は、上掲した文字作成銀河の状況より少し淡い光が入った、瞳孔径が45mmぐらいの銀河の形状を示すものであろう。
Image
(C) 2015 OHKAWA

   F図に、上のカラー写真各部の銀河各部の形と名称を示した。
E772

(C) 2015 OHKAWA


 F図に示すように、銀白色に輝く「北天の最輝部の中央」は「白冠」の形に相似するようになる。それゆえ、「北天の最輝部の両側面」はA図中央の〈アテフ〉冠の両側面に付くダチョウの羽毛飾りに相当する。
 このカラー写真の銀河にあっても、「雄羊の左の角」に観えるはくちょう座の39番と41番の星たちの連なりと、「雄羊の右の角」となるはくちょう座η星と17番・8番・4番の星たちの並びが鮮やかに輝く。
 だから、A図中央の「白冠・ダチョウの羽・雄羊の角」で構成される〈アテフ〉冠は、F図の「北天の最輝部とその周辺の星屑」をデザインするものであったことになる。
 ダチョウは繁殖に先立ち、オスは座って白い翼を大きくひろげて、からだを左右に動かし、のど袋をふくらましてグウグウと低い声で鳴いて威嚇(いかく)する。
 〔白い翼をひろげてすわるダチョウの姿〕に合致して、G図のヒエログリフ「オシリス神」の字形は〔すわる姿〕に図案される。
E781
(C) 2015 OHKAWA
 
 ということからして、F図の「北天の最輝部」は〔白い翼を大きくひろげてすわるダチョウの姿〕に見立てられたと考えられる。

◆D図に示した「コールサックとその南隣の暗黒天体部」は、前述したように〔人・ダチョウ・雄羊が走る足の形〕のごとくに観える。
 エジプトでは、ナイル川は「少年が走るほどの速さで流れる」と形容された。それゆえ、「コールサックとその南隣の暗黒天体部」の〔走る人の足の形〕は「走る少年の速さで流れる」と形容された「おだやかなナイル川の流れ」をあらわしたことになる。
 毎年9月初めころになると定期的にメンフィス周辺ではナイル川の大洪水がピークに達した。「洪水におけるナイル川の激流の速度」はE図の「走るダチョウの速度」にたとえられたにちがいない。
 それゆえ、エジプト南部に所在する「第1急湍(きゅうたん)におけるナイル川の流れ」は「走る雄羊の速度」に形容されたことになる。「急湍」は「船が航行できない、岩の多い急流」であり、第1急湍はナイル川上流の国境近くのアスワン村付近にある。(エジプトの南の隣国のスーダンには、ナイル川の第2~第6までの急湍がある)
 第1急湍の主(ぬし)は「クヌム神」である。前述したように、B図右図の「雄羊(古代エジプトアシナガヒツジ)」のヒエログリフは「クヌム神」の名前をあらわした。
 H図は、ガーディナーのリスト「C4」の「クヌム神」のヒエログリフである。このヒエログリフは表意文字または決定詞としてクヌム神の名称〈ケネムゥ〉をあらわした。
E782

   クヌム神は、第1急湍にあるエレファンティネ島を信仰の中心地とし、この島の南方からやって来るナイル川の洪水を管理する役目を有した。つまり、ナイル川の洪水はクヌムが起こすものとされた。クヌムを怒らせるとメンフィス周辺の洪水が起きなくなり、農業が出来なくなり飢饉がおとずれるとされた。
 したがって、A図中央の〈アテフ〉冠の下部に添えられる「雄羊の角」は〔飢饉が起きないための魔除けの役目〕を有するものであったことになる。
 C図に示したように、「北天の最輝部」の隣の「はくちょう座γ星を包囲する円形の銀河部」はガーディナーのリスト「M5」の「太陽」を意味するヒエログリフとなった。これゆえ、「北天の最輝部周辺の銀河」の形状からデザインされた〈アテフ〉冠をかぶるオシリス神は「夜の太陽」をあらわした。そしてその角を〈アテフ〉冠下部につけ加えられた羊の頭を有するクヌム神は「太陽神の魂」をあらわすとされた。このように、オシリス神とクヌム神は「太陽尾」という共通点を有する。

◆ 今回までのわがブログ「古代エジプト文字の字源」シリーズで解明した数々の合理と科学にもとづいて、ヒエログリフは文字作成銀河から作られたことは事実であると証明される。

|

« 古代エジプト文字の字源・19 | トップページ | 古代エジプト文字の字源・21 »

学問・資格」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

卑弥呼」カテゴリの記事

邪馬台国」カテゴリの記事

歴史」カテゴリの記事

漢字の起源」カテゴリの記事

ヒエログリフ(聖刻文字)」カテゴリの記事

ピラミッド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 古代エジプト文字の字源・19 | トップページ | 古代エジプト文字の字源・21 »